【元JAXA職員が探究】IoTで海の豊かさを守るウミトロン株式会社とは?(衛星データ利活用)

宇宙が関わるテクノロジを使って「海の豊かさを守ろう」としている企業があります。

人類は「持続可能な地球」を目指し、どのような取り組みをしているのだろうか?
そして「宇宙×教育」では何をすればよいのだろうか?

そう考えていた時に「宇宙ビジネス」で持続可能な地球を作ろうとしている、既に取り組んでいる企業がある、と知りました。

そこで、様々な課題に取り組む宇宙業界を探究し伝えることも「宇宙×教育のミッション」ではないかと考え、このブログを書いています。この記事では「ウミトロン株式会社」の情報をまとめます。

【この記事を読んでわかること】

  • ウミトロン株式会社の基本情報
  • どのような事業をやっているのか
  • 企業が取り組む課題とは

【ウミトロン株式会社】とは

食料問題と環境問題の解決に取り組むスタートアップ企業が「ウミトロン株式会社」です。

基本情報

■社名:ウミトロン株式会社(UMITRON K. K.)
■創業:2016年9月1日
■本社:東京都品川区東五反田1-10-7 AIOS五反田ビル 1102号
■資本金:非公開
■従業員:メンバー紹介
■代表取締役:藤原 謙
■共同創業者:藤原 謙、山田 雅彦、岡本 拓磨

出典:同社コーポレートサイト

ウミトロン株式会社は、シンガポールと日本に拠点を持っています。

日本拠点の代表者である藤原氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術者でした。JAXAでは天文衛星「はるか」の姿勢制御系の開発をしていましたが、休職してアメリカの大学に入学。技術を世の中に浸透させていくということが大切と感じ、起業を決意しました。起業前に、三井物産株式会社のイノベーションというテーマで新事業開発をする部署に入り、その後ICT事業本部で農業ITを担当しました。そこで一次産業とITの取り組みに着目。水産業とITを結ぶ同社の起業に至りました。

また、シンガポール拠点の山田氏も九州大学在学中に超小型人工衛星の開発に従事。大学卒業後、三井物産に入社しIoT領域の新規事業開発を手がけました。藤原氏とは大学時代から係わりがあり、ウミトロンを共同創業することになりました。

■どのような事業をやっているのか

水産養殖をコンピュータ化する

スマート給餌機「UMITRON CELL」
魚類養殖保険向けサービス「UMITRON EYE」
リアルタイム魚群食欲解析システム「UMITRON FAI」
水産養殖向け海洋データサービス「UMITRON PLUSE」

出典:同社コーポレートサイト

同社は、IoT人工衛星によるリモートセンシングAIによるデータ解析を活用し、水産養殖における「給餌」の最適化と環境負荷の軽減を実現するべく、2017年6月に1stプロダクトとして「UmiGarden®︎」をリリース。世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、水産資源の安全性、持続可能性、安定供給並びに養殖業における労働環境の改善を目指しています。

水産養殖業での衛星データ利用

2020年6月26日、同社は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の革新的衛星技術実証3号機の実証テーマとして、養殖向けの海洋観測ミッションを搭載した小型衛星による観測実験が選定されたと発表しました。提案代表者は東京工業大学で、ウミトロンはデータ解析・養殖業へのサービス実証実験を担当。小型衛星は2022年に打ち上げられ、海洋のプランクトンや栄養塩情報を高頻度・高解像度で観測し、魚類・貝類・藻類等の養殖業における観測データの活用を目指します。

出典:ウミトロン公式サイト

また同社は、2020年7月に衛星データを活用した水産養殖向け高解像度海洋データサービス「UMITRON PULSE」の提供を開始。小型低軌道衛星の高頻度・高解像度での観測特徴を活かし、これまで観測が困難であった沿岸域や湾内の海洋環境を捉えることで、安定的な水産物生産に貢献するそうです。

出典:ウミトロン公式サイト

■企業が取り組む課題とは

エサやりの最適化と働き方改革

2020年4月30日、同社は、2018年度から愛媛県愛南町と進めてきたスマート給餌機「UMTIRON CELL®︎」による「エサやりの最適化と働き方改革」に向けた実証試験を終了し、魚体重を1kg以上に成長させるために要する期間が4ヶ月以上短縮されたとする試験結果を発表しました。

魚類養殖産業を取り巻く「エサ価格の高騰による生産コストの増加」や「少子高齢化や人口減少による労働力不足」といった課題を、IoTやAI技術の活用によって解決できる可能性があることを証明。利用者からは「給餌時間や頻度を調整した結果、早期生育に繋がり半年以上、早く出荷できた」「遠隔給餌により作業が楽になった」といった声もあるそうです。

出典:ウミトロン公式サイト

水産養殖は21世紀もっとも重要な産業の一つです。国連の発表によると世界の人口は、2050年には97億人にもなることが予想されています。生命維持のために食全体における動物性タンパク質の需要が拡大している中で、牛・豚・鶏といった陸上動物は何千年も前から人の手で育てられている一方で、海洋魚類は未だに漁獲中心の供給が行われており、年間を通した安定供給や自然界の生物多様性保護の観点から水産養殖の需要が急速に高まりつつあります。

同社は、世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、水産資源の安全性、持続可能性、安定供給並びに養殖業における労働環境の改善を目指しています。

「IoT」と「データサイエンス」

持続可能な水産養殖を地球に実装する

そのための最重要テーマは「ハードウェアソフトウェアコンピュータネットワークの融合」そして「データサイエンス」です。

これまで相互に密接に関わることの少なかった分野を強力に融合することによって、水産養殖という実社会のノウハウを定量化し、海洋という極めて運用の難しい空間を解析可能にします。

さらに、こうして得られるデータと魚体生理学や海洋物理学、そしてユーザー目線でのデザイン思考、行動経済学を統合することで、コンピュータによる持続可能な養殖モデルを地球に実装することが我々の目指す姿でしょう。

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ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。
これからも「宇宙×教育」に役立つ情報を発信していきます。

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